国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
平成30年度 民間主導による低炭素技術普及促進事業(戦略的案件組成調査)
共同事業者:(幹事)三菱UFJモルガン・スタンレー証券(株)、(株)ナンバ、イー・アンド・イー ソリューションズ(株)
マレーシアをはじめとする東南アジアにおいて、(株)ナンバが開発したフロン漏えい検知システム フロンキーパーを用いて、今まで途上国では手付かずだった冷媒漏えいの管理を含む機器運転の最適化による新たな省エネICTサービス導入を目指す。本調査では、マラッカ州で冷凍機・空調機を実測し、省エネによるGHG削減ポテンシャルを試算する。
マレーシアは、2030年のGHG削減目標達成のため、「Green Technology Master Plan 2017‐2030」を策定し、省エネによる15%のGHG削減目標を掲げている。また、省エネ法の改正に着手し、インセンティブ制度の導入を検討している。
調査対象のマラッカ州は、持続可能な都市への形成に注力する先駆的な都市で、省エネに向けて新たな技術や手法に強い関心を示している。
対象施設 | 施設A (商業施設) 空調用 大型チラー |
施設B (商業施設) 大型冷凍機 |
施設C (工場) 小型冷凍機 |
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1 実測値を 基にした試算結果 |
省エネ効果 (kWh/年) | 297,000 (38.1%↓) |
29,000 (6.8%↓) |
770 (19.6%↓) |
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コスト低減効果 (円/年) | 2,833千円 | 264千円 | 8千円 | ||
排出削減 効果 |
省エネ効果 (t-CO2/年) | 210 | 20 | 0.5 | |
フロン漏えい回避効果 (t-CO2e/年) | 90 | 180 | 18 | ||
合計 | 300 | 200 | 18.5 |
<試算方法>
(1) 実測値を基にした試算結果:
・省エネ効果 (kWh/年) = (①-②)×稼動日数 (日/年)
・省エネによる排出削減効果 (tCO2/年)=省エネ効果 (kWh/年)×系統電源の排出原単位*1
・冷媒漏えい回避による削減効果(t-CO2e/年*2)=実測期間中の冷媒充填量(ton)×GWP係数*3
(2) 試験値を用いたGHG排出削減ポテンシャル:
・試験結果により、冷媒漏えいによる電力増加率の上限を159%とした場合、稼働率100%の機器において、正常運転時は59%削減できる事から理想稼働率を62.8%として算出。
・正常時消費電力量 (kWh/日)=1日当たり最大消費電力*4×理想稼働率/日
・省エネ効果(kWh/年) = (①-正常時消費電量)×稼動日数 (日/年)
・省エネによる排出削減効果 (tCO2/年)=省エネ効果 (kWh/年)×系統電源の排出原単位*1
・冷媒漏えい回避による削減効果(t-CO2e/年*2)=実測期間中の冷媒充填量(ton)×GWP係数*3
*1 0.694tCO2/MWh
*2 実測期間中の再充填は1回のみだったが、再充填頻度が不明のため、年1回とした。
*3 GWP(Global Warming Potential):地球温暖化係数
*4 1日当たりの最大電力消費量=平均電力消費量 (kWh/日) / 平均稼働率
営業開始とほぼ同時にフラッシュガス発生率が100%となり、営業終了の22時まで続いている。チラーの運転開始と同時にフラッシュガスが発生し始めることから、冷媒不足が明らかであった。
そこで、こちらのチラーに関し、対策として①50kgの冷媒充填を行う。②チラーに内蔵した3機のコンプレッサーのうち1機を停止する。(水温調整機能が故障しているため)を行った結果、フラッシュガスの発生を抑え、大幅な電力使用量のカットに成功した。また、供給冷水温度が15.5℃から12.1℃へ下がり、冷媒吐出温度は80.3℃から58.0℃に、冷媒吸入温度は25.8℃から14.4℃に低下し、チラーの冷却能力の大幅な向上が確認された。
- マレーシアからの評価
- マレーシアが抱える課題
①漏えい管理による省エネ効果創出についての認識不足
新規技術であること、またデータの蓄積が少ないことから、政府(中央・地方)と連携を図り、認識向上を促す活動が必要
②モニタリング(記録、報告)の義務化
漏えい点検・修理及び充填量を記録する義務がなく、過去の状況把握が困難なケースが多い。
③資格取得制度
フロンキーパーによる省エネ・GHG排出削減効果を得るには、冷媒漏えい検知後に漏えい箇所を適切に修理することが要となる。
それには、マレーシアの多くの技術者の全体のレベルの底上げが必要な状況であり、新たな研修内容の導入等の検討が重要である。
- 技術課題
また、NEDO事業の取組の一環として、日本冷凍空調工業会・日本空調冷凍研究所が市販の一体型スクロール冷凍機(冷凍能力6.3kW、冷媒としてR-404Aを使用)と模擬負荷装置を用いて「フロン充填量の変化に応じた冷凍機の電力消費量の実測試験」を実施しました。その結果、フロンが適正量より10%、20%、30%と漏えいした場合、消費電力量がそれぞれ7%、17%、59%と増加することが分かりました。
冷却能力が低下するまで漏えいを放置した場合、在庫品や販売品の品質劣化や、大幅な修理費が発生するのみならず、設定温度到達までの稼働時間が延びて電力使用量の増加を招くことが実証されました。
冷凍設備のフロン漏えいは、冷凍設備の温度異常が起きて初めて発覚しますが、この時点では、既に50%~80%のフロンが漏えいした後となっています。一般的に漏えいは、ゆっくりと進行し、漏えいしていることに気づくまで、過剰な電力(最大59%)を消費し続ける事になります。
こうした事実は、専門業者の間でも、ほとんど認識されておりません。フロンキーパーでは10%程度の漏えい時点での検知が可能となりますので、早期発見により無駄な電力消費を抑えることができます。
*電力増加率は、100%が本来消費されるべき電力消費量と見なし、同基準からの増加を示している。
同試験は、使用する冷凍機の機種、冷凍能力、冷媒等により結果が異なることが想定されている。
出典:日本冷凍空調工業会・日本空調冷凍研究所(2018)を基に(株)ナンバが作成
市長との集合写真
政府機関、大学、民間関係者を招いた報告会の様子
本事業にて環境大臣賞を受賞
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